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2007/02/18

釧路湿原再生プロジェクトへの疑問

先日テレビで釧路湿原の自然再生プロジェクトについての番組を見ました。釧路湿原は北海道の釧路川に沿って広がる日本最大の湿原。美しい景観に加え、タンチョウヅルやオジロワシ、キタサンショウウオなど貴重な野生動物の生息地となっており、ラムサール条約にも登録されています。この釧路湿原でもご多分に漏れず、自然破壊が進んでいます。

流域の開発に加え、洪水対策の名目で川の蛇行を直線化する工事も行われました。蛇行する川は洪水を繰り返すことで、流域を潤し、土を豊かにし、生き物に恵みを与えてきました。直線工事で洪水が減った代わりに、それは自然のバランスに様々な影響を与えています。

流域では、本来湿原に生えるヨシやスゲ類が減り、ハンノキが異常に成長しています。湿原の乾燥化が進んでいるのです。釧路湿原の面積は、この50年間で20%も失われました。流域や湖沼に土砂が堆積し貴重な水生植物や魚類も減少しています。これらの変化はタンチョウヅルやサンショウウオなどそこに棲むすべての生物に深刻な影響を与えます。

これではいけないという事で環境省の主導で自然再生プロジェクトが進んでいます。テレビ番組は、その紹介でした。プロジェクトの目玉は、直線化した川の一部を再び蛇行させる工事。人間は愚かだが、過ちを認めてやり直すことができる。それが人間の素晴らしさ、そんなイメージの番組でした。

「話がうますぎる」そう思って調べると、やはり問題はそんなに単純ではないようです。環境省のHPでは、釧路湿原自然再生の必要性を強く訴え、取り組みを紹介していました。しかし、そもそも10億円もかけて川を直線化した反省は感じられません。今回、その一部を元に戻すだけで6億円もかかるそうです。これは新たな公共事業の発生でもあります。また、再生プロジェクトの一方で、現在も大規模な開発が進められています。ラムサール条約や国立公園として保護されている地域は、実は湿原の一部に過ぎず、これが開発の抜け道となっているようです。「一方で破壊し、一方で再生する」という構図。うさんくさいものを感じずにはいられません。

美しい自然に恵まれ、独自の自然観や文化を発達させてきた日本。環境を守るための高い技術力と経済力を持つ日本。今こそ、世界の見本となる環境保護の思想とシステムを構築していく時ではないでしょうか。

    釧路湿原    自然再生―釧路から始まる

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